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こいわいのいっか
小祝の一家
宮本 百合子
「文芸」1934(昭和9)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,193 字 · 31 页
そう思った。
然し、勉はそのことを今日一日、二通り三通りの活動の合間に考えつづけていたのであった。ミツ子を迎えに行く金も送る金も出来る見当はつかない。A市で、貞之助がますます食いつめるであろうことは目に見えた。東京へ出て、勇が働き、貞之助は納豆でも売り、祖母ちゃんはそのまめで手ぎれいな性質で何か内職でもやれば、どうにか食っては行けるだろう。東京へ出て来て、自分らの暮しを見ればいいんだ。勉は強くそう思った。そうすれば、ミツ子が厄介になったのをいいことにして、勇の次男坊気質を助長させながら「長男の貴様」にまた食い下ろうとする狡い性根もいくらか癒るだろうし、勉の仕事の性質ものみこむだろう。こっちの暮しを目で見て、一緒に思い知ればいいんだ。
説明されて見ると、乙女もそれを不自然なこととは思えなかった。
「――いいかしんないね」
乙女は、眼を大きくしたまま、しかし腹からのように合点をし、舌を動かしてゆっくりと自分の唇を上唇、下唇となめまわした。
「――じゃ手紙書いてやろう……お前先へねれ」
勉は、貞之助へ手紙を書き、それから別に長いことかかって薄い紙に何か書き、それぞれ別の封筒に入れ、一つの方を部屋の外へもって出て、どこかへしまった。