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しょうじょじごく

少女地獄

夢野 久作

「少女地獄」黒白書房、1936(昭和11)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 105,174 字 · 206 页

青空文庫

手に提げた学生用の手提袋には長い丈夫な麻縄と、黒繻子の覆面用の風呂敷と、旧式の手慣れたコダックと、最新式の小型発光器と、蝋マッチと、写真の紙を切るための安全剃刀の刃を入れておりましたが、これは前の晩に宿屋の屋根で使い方を研究して置きました、練習ずみの品々で、校長先生に取っては、ピストルよりも、毒瓦斯よりも、何よりも恐ろしい私の復讐の武器なのでした。

そんな事とは夢にも御存じなかったのでしょう。却って私を大阪へ追払ってモウ一安心とお思いになったのでしょう。校長先生は謝恩会のあった翌る日の二十四日の夕方に、何処かへ出張なさるような恰好で、真面目なモーニングに山高帽を召して、書類入れのボックス鞄なぞを大切そうに抱えて、下宿をお出ましになると、夕暗の町伝いを小急ぎに郊外へ出て、天神の森の方へ歩いて行かれました。……サテは……と胸を躍らせながら一心にアトを跟けて行きますと、果して天神の森には二人の和服の紳士の方が待っておられました。……スラリとした影とズングリ低いのと……それが近付いてみますと、やはり私の想像通りに傴僂の川村書記さんと、好男子殿宮視学さんに違いない事がわかりました時の私の喜びはどんなでしたろう。