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しょうじょじごく

少女地獄

夢野 久作

「少女地獄」黒白書房、1936(昭和11)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 105,174 字 · 206 页

青空文庫

その心理作用に対する彼女の執着さを、小生は貴下に対して逐一説明し、解剖し、分析して行かねばならぬという異常な責任を持っておる者であります。

しかもその困難を極めた、一種異様な責任は本日の午後に、思いもかけぬ未知の人物から、私の双肩に投げかけられたものであります。……ですからこの一種特別の報告書も、順序としてその不可思議な未知の人物の事から書き始めさして頂きます。

本日の午後一時頃の事でした。

重態の脳膜炎患者の手術に疲れ切った私は、外来患者の途絶えた診察室の長椅子に横たわって、硝子窓越に見える横浜港内の汽笛と、窓の下の往来の雑音をゴッチャに聞きながらウトウトしておりますと、突然に玄関のベルが鳴って、一人の黒い男性の影が静かに辷り込んで来ました。

跳ね起きてみますと、それはさながらに外国の映画に出て来る名探偵じみた風采の男でした。年の頃は四十四、五でしたろうか。顔が長く、眉が濃く太く、高い、品のいい鼻梁の左右に、切れ目の長い眼が落ち窪んで鋭い、黒い光を放っているところは、とりあえず和製のシャアロック・ホルムズと言った感じでした。全体の皮膚の色が私と同様に青黒く、スラリとした骨太い身体に、シックリした折目正しい黒地のモーニング、真新しい黒のベロア帽、同じく黒のエナメル靴、銀頭の蛇木杖という微塵も隙のない態度