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しょうじょじごく

少女地獄

夢野 久作

「少女地獄」黒白書房、1936(昭和11)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 105,174 字 · 206 页

青空文庫

とにも角にもこうして二、三分間睨み合ったまま立ち辣んでいるうちに、私はとうとう堪えられなくなって次の言葉を発した。

「どうも……何度も何度もお眼にかかり損ねまして……やっとお眼にかかれて安心しました」

こうした私の二度目の挨拶は、だいぶ固苦しい外交辞令に近づいていたように思うが、しかし白鷹氏は依然として私を見据えたまま、両手をポケットに突込んでいた。エタイのわからぬ人間に口を利くのは危険だと感じているかのように……。

こうしてまたも十秒ばかりの沈黙が続くうちにまたも、広間の方向で浮き上るようなツウ・ステップのレコードがワアア――ンンと鳴り出した。

私の腋の下から氷のような冷汗がタラタラと滴った。私はまたも、たまらなくなって唇を動かした。

「ところで……奥さんの御病気は如何です」

「……エ……」

この時の白鷹氏の驚愕の表情を見た瞬間に、私は最早、万事休すと思った。

「妻が……久美子が……どうかしたんですか」

「ええ。三越のお玄関で卒倒なすったそうで……」

「ええッ。いつ頃ですか」

「……今朝の……九時頃……」

ドット言う哄笑が爆発した。長椅子に腰をかけて耳を澄ましていたタキシード連が、腹を抱えて転がり始めた。