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しょうじょじごく

少女地獄

夢野 久作

「少女地獄」黒白書房、1936(昭和11)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 105,174 字 · 206 页

青空文庫

その顔を見ながら鼠の中折帽を脱った瞬間に私は、探偵小説の深夜の一ページの中に立たされている私自身を発見したような鬼気に襲われたものであった。

「姫草さんとドンナお話をなすったの」

「ウム。まあお前達から話してみろ」

「貴方から話して御覧なさいよ」

「……馬鹿……おんなじ事じゃないか。話してみろ」

「だって貴方……」

「茶の間へ行こう。咽喉が乾いた」

それから熱い番茶を飲みながら二人の女の話を聞いているうちに何と……今の今まで私の脳味噌の中に浮かみ現われていた奇妙な家庭悲劇の舞台面が、いつの間にかグルグルと一変してしまったのであった。

私の留守中に、病気で寝ておられるはずの白鷹久美子夫人から、臼杵病院へ電話が掛ったのであった。それは約二時間前に私に面会した白鷹助教授が、すぐに下六番町の自宅へ電話をかけた結果であったらしく、非常に冷静な、同時にこの上もなく友誼的な口調で、白鷹夫人が私の一家に対して警告してくれたものであった。

相手に出たのは妻の松子だったそうであるが、その時に白鷹夫人から聞いた事情なるものは、女の耳に取って真に肝も潰れるような事ばかりであったと言う。