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しょうじょじごく
少女地獄
夢野 久作
「少女地獄」黒白書房、1936(昭和11)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 105,174 字 · 206 页
そのほか医員の甲乙と自分との関係を、自分の口から誠しやかに噂に立てる……と言った調子で、風儀を乱すことが甚しいので、とうとうK大耳鼻科長、大凪教授の好意によって諭示退職の処分をされる事になったという。
しかし以前からメソジストの篤信者であった白鷹久美子夫人は、かねてから彼女のそうした悪癖に対して一種の同情を持っていた。そうして彼女の才能と行末を深く惜しんだものらしく、彼女が首になると同時に自宅に引き取って、あらん限りの骨を折って虚構を吐かないように教育した。キリストの聖名によって彼女の悪癖を封じようと試みたものであった。
ところが、それが彼女に取っては堪まらなく窮屈なものであったらしい。とうとう無断で白鷹家を飛び出して行方を晦ましてしまったので、何処へ行ったものであろうと明け暮れ久美子夫人が気にかけているうちに突然、本年の六月の初め頃、ユリ子から電話が掛って来て、今は横浜の臼杵病院にいる。妾も、それから後、虚構を吐くのをピッタリと止めて、臼杵先生から信用されているから、以前の事は、どうぞ助けると思って秘密にして頂きたい……という極めてシオらしい話ぶりであったと言う。