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しょうじょじごく
少女地獄
夢野 久作
「少女地獄」黒白書房、1936(昭和11)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 105,174 字 · 206 页
「そうですか……そのまぼろしの何とか言う湯の中の話なんかトテも素敵でしたよ。青黒い岩の間に浮いている二人の姿が、天井の鏡に映って、ちょうど桃色の金魚のように見えたって言いましたよ……ハハハハ……」
「馬鹿馬鹿しい。いつ行ったんだろう」
「一人で行くはずはないですがね」
「むろんですとも……呆れた奴だ」
「どうも怪しからんですね」
「怪しからんです……実は今朝、貴官から、いつまでも可愛がって置いて遣るように御訓戒を受けましたが、そんな風に人の名誉に拘わる事を吐きやがるようじゃ勘弁出来ません。これから直ぐにタタキ出してしまいますから、その事を御了解願いに参りましたのですが」
「イヤイヤ。赤面の到りです。謹んでお詫び致します。どうか直ぐに逐い出して下さい。怪しからん話です」
「怪しからんぐらいじゃありません。私の不注意からとんだ御迷惑を……」
「しかしとんでもない奴があれば在るものですな。初めてですよ。あんなのは……」
「そうですかねえ。あんなのは珍しいですかねえ。貴官方でも……」
「所謂、貴婦人とか何とか言う連中の中には、あの程度のものがザラにいるでしょうが、犯罪を構成しないから吾々の手にかからないのでしょうな」