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『しょうしょ』のこうとうひひょう

『尚書』の高等批評

白鳥 庫吉

特に堯舜禹に就いて

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,123 字 · 8 页

青空文庫

堯舜禹の史實として傳へらるゝ記事が創作物なりとせば、そは何れの時代に於いて製作せられしか。換言せば易、陰陽、五行、十二宮、二十八宿等の思想智識はいづれの時代に現はれしか。これ當面の問題也。

禹の九州の事は『書經』の中にも見え、齊の鄒衍之をいひ、堯舜禹のことは孔子が堯を天に譬へしに徴せば、今日傳へらるゝが如き堯は孔子時代にも知られしなるべく、又『詩經』の時代にも知られし也。次に十二宮、二十八宿の中の星の名は『詩經』に見え、陰陽の思想は『詩經』になく『論語』にも見當らざれども、これらのものに發見せられずとて全然之を否認するは不合理なり。されば他の事實より類推して之も亦同時代のものとするを得んか。然らばこれらの思想智識は春秋時代に於いて孔子時代以前に存せしは明也。されど禹貢の九州が荊州即ち楚の地を含めるに見、一方この地方の知られたるは春秋時代なるに見ば、兎に角周時代まで泝らせ得べきには非ざる也。

もしこの臆説を眞とせば、次に考ふべきはこの思想は支那本來のものなりや、はた外來のものなりやの問題なり。思ふに陰陽及び天地人三才の思想はカルデアにもアッシリアにも存し、イラン民族に起りしゾロアスターの教は、陰神陽神を設けてその世界觀を説きたり。