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おぜざつだん

尾瀬雑談

木暮 理太郎

「山岳」1925(大正14)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,224 字 · 7 页

青空文庫

然し周囲が相当な森林であって、あらわでないのは嬉しい。金精峠の西に在る菅沼は、丸沼及大尻沼と共に白根山の堰止湖かと疑われるが、これはまた殆ど針葉樹の純林に周囲を取り巻かれている為に、恐ろしく暗い感じのする山湖である。妙に息苦しいような圧迫をさえ感ずる。其湖畔の道は稍や富士山麓の本栖湖の南岸を辿る小径と似通っている所があるけれども、あれよりも遥に深刻である。大尻沼はわるくない。丸沼は北岸の人家が甚しく目障りとなるのは是非ないとして、湯本の人家が湯ノ湖に夫程の俗臭を帯びさせるとも思われないのは、周囲の自然がすぐれて立派である為ではなかろうか。私は秋の湯ノ湖に於て彩色された最も荘重な自然の姿を見た。そして更に湯ノ湖には乏しい変化を加えたものが尾瀬沼の風景であろうと思った。

尾瀬沼畔の秋を賞する為に私は十月半に旅行したが、時既に遅れて、岸辺に林立せる白樺の黄葉が散り残っていた外は、闊葉樹は皆落葉してしまって、残念ながら一点の紅にも接することを得なかった。例年十月一日から五日あたりにかけて最も見頃であるという。それにしても恐らく紅葉する樹木の数は湯ノ湖に劣るであろうと思われる。