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おぜざつだん
尾瀬雑談
木暮 理太郎
「山岳」1925(大正14)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,224 字 · 7 页
尤も樺類の霜葉は其量からも質からも素晴らしいものであることは疑を容れない。
いつぞや鬼怒沼へ行った時、燕巣山の北方に在る国境山脈の一峰から片品川の渓谷を瞰下して、火と燃ゆる満目の紅葉に驚喜して以来、秋の尾瀬を訪れたいというのが年来の希望であった。それが叶って十月の尾瀬に遊ぶことを得たが、片品川に沿うて遡る際、注意して四辺を物色しても、紅葉は戸倉沢の附近に稍多いと思った丈で、雨の為に展望のきかなかった所為もあろうが、予期の大観に接することを得ないように思われて、心窃に物足りなく感じた。尤も闊葉樹の梢は散るに間もあるまいと想われる木の葉が褐色、黄褐色、又は赤褐色に彩られてはいたものの、こんな枯葉同様のもの(科学的にいえば葉緑素を失った葉は枯葉であるというが、尚お其上に水分を失ってカサカサしたものでなければ、私達は普通枯葉とはいわない)では満足出来ない。それで私は夏の間あまり日照りが続いた為に、葉がいたんで色が冴えないのであろうと独りで極めて、自ら慰めていたのであった。
十月中旬には珍らしいといわれるほど夜の間に雪が四、五寸も積って、明る一日は吹雪に暮れ、それが霽れると絶好の登山日和となった。