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びょうぶはたたまれた

屏風はたたまれた

山本 周五郎

「文藝春秋」文藝春秋新社、1957(昭和32)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,953 字 · 24 页

青空文庫

と責めた。千夜はされるままになっていて、それからようやく「あさって、いつもの時刻に、このうちで」と答えた。

「あさって、――たしかだな」

「ええ、間違いありません」

「よく聞いてくれ、千夜」と弥十郎は彼女を抱きしめ、耳へ口をよせて囁いた、「私にも約束した者がある、それを断わるのは容易ではないと思うが、もうおまえのほかに妻を娶る気持はない、どんなことをしても約束のほうは破談にする、必ず破談にしてみせるから、おまえもはっきり心をきめてくれ、わかるか」

千夜は彼の腕の中で頷いた。

「うれしゅうございます」と千夜は囁き返して云った、「あさっておめにかかりましたら、すっかりお話し申します」

「それでいい」と彼は云った、「間違いなくあさってだよ」

「はい」と頷いて、千夜は大胆に身をすりよせた。

その七度めを最後に、千夜はまったく消息を絶った。単に消息が絶えたばかりでなく、それまでにあった事実までが、彼の前でかき消されたのである。――千夜と約束の日に、「川西」へゆくと、初めて見る女中が出て来て、いま座敷がみな塞がっているから、と断わられた。そんなことはかつてなかったし、約束がしてある筈なので「女中がしらか誰かに訊いてみてくれ」