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やまなかときわぞうし

山中常盤双紙

寺田 寅彦

「セルパン」1934(昭和9)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,649 字 · 4 页

青空文庫

はじめは仇打ち事件の素因への道行であり、次に第一のクライマックスの殺し場がある。その次に復讐への径路があって第二の頂点仇打ちの場になる。そうして結局の大団円なりエピローグが来る。そういう形式がかなりはっきりしているのが目につく。

映画のタイトルに相当する詞書の長短の分布もいろいろ変化があって面白く、この点も研究に値いする。

二つのクライマックスの虐殺の場がかなり分析的にコマ数を多くして描写されている。展覧会場では、この二つの頂点の処の肝心な数コマが白紙で蔽われて「カット」されていたことからしてみると、相当に深刻な描写があって人間の隠れた本能を呼びさますものがあるものと見える。

全十二巻の詞書というものを売っていたので買ってみると、詞書の上段に若干の画面の写真版が並んでいて、その中には上記のカットされたもののうちの二、三があるので大抵の想像が出来る。第一の頂点では常盤と侍女と二人が丸裸にされて泣き騒ぎ、その上に無残に刺殺され、侍女の死骸は縁側から下へころがされるといういきさつが数コマに亘って描かれてあるらしい。また第二の山では牛若丸が六人の賊をめちゃくちゃにたたき斬る、そうして二つ三つに切った死骸を蓆で包んで川へ流しに行くまでを精細な数コマに描き分けたものらしい。