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やまなかときわぞうし
山中常盤双紙
寺田 寅彦
「セルパン」1934(昭和9)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,649 字 · 4 页
こういうことから考えてみると、この絵巻物は、一方では勧善懲悪の教訓を含んでいると同時に、また一方ではおそらく昔の戦乱時代の武将などに共通であったろうと思われる嗜虐的なアブノーマル・サイコロジーに対する適当な刺戟として役立ったものであろうと想像される。殊に第一のクライマックスは最も極端なアブノーマル・エロチシズムの適例として見ることも出来はしないかと想像される。
こういうものが如何なる時代に如何なる人の需めによって如何なる人によって制作されたかということは、色々な問題に聯関して研究さるべき興味ある題目となるであろうと思われる。
それにつけて想い出されるのは、仏教や耶蘇教の宗教画の中にも、この絵巻物の中に現われているような不思議な嗜虐性要素のしばしば現われることである。十字架の基督や矢を受けた聖セバスチアンもそうであるし、また地獄変相図やそれに似た耶蘇教の地獄図、聖アントニオの誘惑の絵の中にも同じようなものが往々見出される。こういう一致は偶然のことではなくて深い奥の方に隠れた人間の本性に根を引いていることだろうと思われるのである。
この間映画で見たが、インドの聖地では、自分の肉体を責めさいなむことを一生の唯一の仕事にしている人間が沢山いるようである。