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いけぶくろのみせ
山之口貘詩文集
山之口 貘
山之口貘『山之口貘詩文集』。同一底本的分册已合并为一书。收入:池袋の店、沖縄帰郷始末記、おきなわやまとぐち、声をあげて泣く、詩とはなにか、装幀の悩み、つまり詩は亡びる、夏向きの一夜、野宿、暴風への郷愁、私の青年時代、ダルマ船日記、チャンプルー。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 44,477 字 · 93 页
筆者は過日、ある新聞社のA君に案内されて「芳林堂」という本屋の横をはいったが、突き当って右へ折れたところに「おもだか」という店がある。おかみさんの顔を見て、二十年ばかり前のことをおもい出したのだ。そのころ、東両国の国技館前の通りにあった「安兵衛」という飲屋のおかみだったからなのだ。主人はときくと、なくなりましたといい、いまは、ときくと、ひとりですとおかみは答えたのである。
東横百貨店前のマーケットのなかをうろうろしていると、三味線の音がきこえて来たりする。三味線とはいっても、東京あたりで俗にいっているところの蛇皮線の音である。蛇皮線というのは、三味線の元祖で、もともと琉球でも三味線と呼ばれているのである。錦蛇の皮を張ってあるので、蛇皮線と呼んでももっともらしくきこえるのだ。泡盛屋「さんご」で鳴らす琉球の三味線なのである。主人は、暴風の名産地石垣島の出身で、本来は絵の方の人なのである。定連には、国展、独立、自由美術などの画家、彫刻家多数であるが、この店では、カラカラで泡盛を出すので、杯でたのしめるのである。
泡盛屋は、西口にもう一軒、「おもろ」がある。