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いけぶくろのみせ

山之口貘詩文集

山之口 貘

山之口貘『山之口貘詩文集』。同一底本的分册已合并为一书。收入:池袋の店、沖縄帰郷始末記、おきなわやまとぐち、声をあげて泣く、詩とはなにか、装幀の悩み、つまり詩は亡びる、夏向きの一夜、野宿、暴風への郷愁、私の青年時代、ダルマ船日記、チャンプルー。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 44,477 字 · 93 页

青空文庫

このごろ、東京の泡盛屋で、豚のしっぽを食べさせてくれるところもある。知らない人は、琉球料理とおもって食べているのかも知れないが、これは、泡盛屋のマダムが発明したものである。しかし、うまい。しっぽそのままの形を皿にのせて出すのである。好きな人にとっては形などどうでもよいのである。

日常よく食べる魚は、飛魚である。那覇から南へ二里のところに、糸満という漁村がある。沖縄唯一の漁村で、東支那海に面している。糸満の女性も男性も素晴らしい体格をしていて、沖縄では目立つ存在である。糸満では、男達が獲ってきたイカや飛魚、その他のものを、彼等の細君が買いとる。それを竹製の大きな笊に入れて、頭にのせ、大手を振り振り駈け足で、二里の道を那覇の市場まで売りにきたものである。

飛魚は、輪切りにして、塩煮にするとうまい。豆腐といっしょにおつゆにするときも、醤油を使わずに塩味にする。ぼくは、飛魚の塩煮が好きで、特に、眼球と脳髄を食べずにはいられなかった。

父は、飛魚の刺身が好きで、塩煮にする前に、必ず刺身をとらせた。刺身と云えば、石垣島で食べたのが素晴らしかった。父がそこで、鰹節製造の事業にたずさわっていたころで、ぼくは時々、その製造場へ鰹の刺身を食べに行った。