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さんけいにいくるひとびと
山谿に生くる人々
葉山 嘉樹
――生きる為に――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 33,699 字 · 67 页
それは人々の耳を打ち、足を顫わせた。
山は底鳴りをさせ、地響きを立てながら、要慎深く、慎重に、辷り落ちた。断層の理の一ヶ所に頑丈な突起があると見えて、その部分の中央を三四尺辷らして止め、その両端は下の部分から順序よく、鉄道線路の切り取りに崩れ落ち、そこに収容し切れない部分だけ、四五間の断崖を跳り越えて、幅二間の報償道路の軟かい路面へ、尖った頭を三四尺も突っ込み、その上へ上へと、線路をオーバーした「山」は畳み重なった。
そして、都合よく、それは下の方まで、転落しては来なかった。山の中央部の突起部が緑屋を救い、この工事を請負った親方をも救ったのであった。
が、その山の崩壊の全時間は、どの位の間かかったのだろう。それは一日分、いや二日分、いやもっと大きな心の激動を、小林や大山や、緑屋の者たちに与えたのだ。
だが、辷り始めてから、納まってしまうのには二分間とはかからなかっただろう。
「バンザーイ!」
と、大山は、小林へ、両手を高く上げて叫んだ。小林は崩壊現場で、臨終の病人を看護る、医師のように、厳粛な顔をしていた。が、今、山が幸いにして中途で食い止ったことを見届けて、安堵したらしく、何とも言えない涙ぐましい微笑を見せたのであった。