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いわたふじんのしをいたむ

岩田夫人の死を悼む

岸田 国士

「婦人倶楽部 第三十一巻第六号」1950(昭和25)年6月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,409 字 · 5 页

青空文庫

本誌の読者は「夫婦百景」の筆者獅子文六が、同時に岩田豊雄であることぐらいはご承知であろう。その夫人静子さんが、急な病いで亡くなられた。四十四歳といえば、まだ人生を終るには早く、夫君が今後ますます多くの傑作を書かねばならぬように、夫人もまた、将来にさまざまな期待と希望とを抱いて、この春を迎えようとしていたにちがいない。

私は岩田君ともつとも親しい友人の一人として、この不幸を正視することができないくらいである。まして、いま、この不幸について公けに語ることは、いかにもその時機でないような気がするのだが、本誌の編集者は、強引に、そして巧妙に私を説き伏せた。私は、一方にためらう自分を励ましながら、すこしでも書くに値する一文を、岩田夫人のために捧げる決心をした。

十五年前、私は、ある神社の会館で行われた岩田夫妻の結婚披露式に列したことをはつきり覚えている。友人を代表するかたちで、私が一席、祝辞を述べることになつたのだが、どんなことを喋つたか、それはもうわすれてしまつた。しかし、事の序に、新夫人に向つて、岩田豊雄なる人物の紹介をちよつぴりしたように思う。たしか、岩田君はわれわれ文筆に従事するもののうちでも、とりわけ気むずかし屋の方に属するけれども、その代りに、彼は、万事に、はなはだ呑みこみがよく、夫人の方で、もしその