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しまもり

島守

中 勘助

「犬 附島守」岩波書店、1924(大正13)年5月10日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,146 字 · 37 页

青空文庫

降りしきる時雨をききながら栗をむいて栗飯をたく。

夕。きょうをかぎりに雨の小やみのひまを桟橋へゆく。岡にも里にもたちこめた霧のたえまから濃い紅葉の色がみえて人たちは雨にもめげずこの遅くまで稲を刈っている。なごりおしくいつまでもいつまでも立ちつくす。

鳥もみんな帰った。稲刈りの人も見えなくなって霧がそのまま闇になってゆく。きょうは両方の燈明をともし、また桟橋に立って水にうつる火影が「し」の字や「く」の字になるのを眺めている。

十七日

恐しい白根颪がふく。朝早く本陣が荷造りにきて一つ一つ舟へ運びおろす。きょうは風が強いから舟を小島が崎の入江につないできたという。鳥居のところへおり汀の杭につないだ舟にのって後の掃除をしてる本陣を待つ。島の木は咆えに咆え、日光に溢れた雲が奔馬のように飛んでゆく。

舟をだす。讃むべきかな、島はもみじして鴛鴦のごとくにみえる。この島は国のはじめのころはたぶん一羽の鴛鴦だったのであろう。彼は禍津日の神の妬みにふれてただひとりの恋人をうしない嘆きのあまりにかような島となってしまった。それゆえ幾千年の後の世の今になっても秋がきてその子の子らがあの入江にわたってくると恩愛のきずなにひかれて美しい昔の姿をあらわすのである。