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くずれるおにかげ

崩れる鬼影

海野 十三

「科学の日本」博文館、1933(昭和8)年7月~12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,100 字 · 69 页

青空文庫

不思議にもう熱がケロリとなくなっていました。

「やあ、お前は無事だったんだネ。兄さんはひどい目に遭ったよ」

兄は医者に厚く礼を云って、まだ起きてはいけないかと尋ねました。医者はもう暫く様子を見てからにしようと云いました。

その間に、私が見たいろいろの不思議な事件の内容を兄に説明しました。

「そうかそうか」だの「それは面白い点だ」などと兄はところどころに言葉を挟みながら、私の報告を大変興味探そうに聞いていました。

「兄さん。この家は化物の巣なのかしら」

「そうかも知れないよ」

「でも、化物なんて、今時本当にあるのかしら」

「無いとも云いきれないよ」

「どうも気味の悪い話ですが」と小田原病院の医師が側から口を切りました。「ここの谷村博士の研究と何か関係があるのではないでしょうか。博士と来たら、二十四時間のうち、暇さえあれば天体を覗いていられるのですからネ。殊に月の研究は大したものだという評判です」

「月の研究ですって」と兄は強く聞き返しました。今夜も大変月のいい夜でありました。

「博士が空中を飛んだり、あの窓から眼に見えないそして大きなものが飛び出したり、それから洋服の化物のようなものがウロウロしていたり、あれはどこからどこまでが化物なのかしら」