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くずれるおにかげ
崩れる鬼影
海野 十三
「科学の日本」博文館、1933(昭和8)年7月~12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,100 字 · 69 页
「それは皆化物だろう」
「兄さんは化物を本当に信じているの」
「化物か何かしらぬが、僕がこの室で遭ったことはどうも理屈に合わない。あれは普通の人間ではない。眼には見えない生物が居るらしいことは判る。しかし月の光に透かしてみると見えるんだ。僕はこの部屋に入ると、いきなり後からギュッと身体を巻きつけられた。呀ッと思って、身体を見ると、何にも巻きついていないのだ。しかし力はヒシヒシと加わる。僕は驚いてそれを振り離そうとした。ところがもう両腕が利かないのだ。何者かが、両腕をおさえているのだ。僕は仕方なしに、足でそこら中を蹴っとばした。すると何だか靴の先にストンと当ったものがある。しかし注意をしてそこらあたりを見るが、何にも見えないことは同じだった。そのうちに、呀ッと思う間もなく、僕の身体は中心を失ってしまった。身体が斜めに傾いたのだ。僕はズデンドウと尻餅をつくだろうと思った。ところが尻餅なんかつかないのだ。身体は尚も傾いて身体が横になる。そこで僕はもう恐怖に怺えきれなくなって、お前を呼んだのだ」
「ああ、あのときのことですネ」
「すると今度はイキナリ宙ぶらりんになっちゃった。