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じゅんさじしょく
巡査辞職
夢野 久作
「新青年」1935(昭和10)年11~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 31,907 字 · 63 页
中にも草川巡査の指揮振りは実に手に入ったもので、鶴木検事は一々感心しながら見物していた。青年連中の草川巡査に対する尊敬ぶりは、ちょうど小学校の生徒が、受持の教師に対する通りで、骨身を惜まず、夢中になって活躍するのであった。日盛りの蝉の声々が大海原の暴風を思わせる村の四方の山々を通抜ける幾筋もの小径を基線にして、次第次第に捜索の範囲が拡大されて行った。青年ばかりでなく村の大人たちまでも、この前代未聞の惨劇を描き出した未知の兇器に対する、たまらない好奇心に駈られて、強烈な真夏の光線を交錯させている草や、木や、石の投影に胸を躍らせ、呼吸を魘えさせながら、そうして如何にも大事件らしく呼び交す感傷的な叫び声の中に、色々の鳥や、虫の影を飛立たせながら、眼も眩むほどイキレ立つ大地の上を汗にまみれて匐いまわった。
しかし日暮方まで何等の得るところも無かった。
ヘトヘトに疲れた草川巡査が、青年達を国道の上に呼集めた時には、判検事の一行はモウ引上げていた。二人の被害者の屍体も、蒲団に包んだ上から荒菰で巻いて、町から呼んだ自動車に載せて、解剖のため、大学へ運び去られたアトであった。