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こうじょうさいぼう

工場細胞

小林 多喜二

小林多喜二『工場細胞』。同一底本的分册已合并为一书。收入:工場細胞、独房、母たち。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 91,234 字 · 184 页

青空文庫

独房

誰でもそうだが、田口もあすこから出てくると、まるで人が変ったのかと思う程、饒舌になっていた。八カ月もの間、壁と壁と壁と壁との間に――つまり小ッちゃい独房の一間に、たった一人ッ切りでいたのだから、自分で自分の声をきけるのは、独り言でもした時の外はないわけだ。何かものをしゃべると云ったところで、それも矢張り独り言でもした時のこと位だろう。その長い間、たゞ堰き止められる一方でいた言葉が、自由になった今、後から後からと押しよせてくるのだ。

保釈になった最初の晩、疲れるといけないと云うので、早く寝ることにしたのだが、田口はとうとう一睡もしないで、朝まで色んなことをしゃべり通してしまった。自分では興奮も何もしていないと云っていたし、身体の工合も顔色も別にそんなに変っていなかったが、約一年目に出てきたシャバは、矢張り知らずに彼を興奮させていたのだろう。

これは、田口の話である。別に小説と云うべきものでもない。

ズロースを忘れない娘さん

S署から「たらい廻わし」になって、Y署に行った時だった。

俺の入った留置場は一号監房だったが、皆はその留置場を「特等室」