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しみんのせいかつとかがく

市民の生活と科学

宮本 百合子

「科学ペン」1940(昭和15)年6月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,385 字 · 9 页

青空文庫

こういう時期こそ、科学性はその原理的なものへの愛と興味で家庭教育のうちにもとりいれられ、民衆のなかにも培われなければなるまいと思う。この必要は、卑俗にされた文学作品が氾濫し得る時代にこそ、益々文学性というものの追求が妥協を排して行われなければならないという文化の問題と全く同一ではあるまいか。

文化映画というものの大きい役割がここにも顧み期待される。音楽という芸術が、音響学の面から扱われて興味ふかい試みの一歩を示した東宝の文化映画のことや、つい先頃偶然みたドイツの「池中の秘密」ミュンヘン科学博物館の実写なども思い出される。この科学博物館の映画からも原理を形象的に啓蒙してゆく方法がいかに多様で自由で人間的で具体的であり得るかということを考えさせられた。

文学は今日、あながち源氏物語をかりないでも、世界文学の間に一つの明瞭な日本としての独自性をもって存在していると思う。各民族の文学は本質的にそのような存在性をもっている。科学の成果の普遍性は広大であって原理はあらゆる人類のもの、応用は各民族のものと云う風なところがあるように思える。科学の真の発展の動因は原理のうちにあるとすれば、日本の若い世代がその貢献によって人類の原理を一進させ得るときが持てるように、家庭での科学教育や科学性の普及が行われることを切望する心持