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ゆうれいやしきのさつじん

幽霊屋敷の殺人

山本 周五郎

「少年少女譚海」1930(昭和5)年9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,339 字 · 19 页

青空文庫

謎の白堊館

謎の白堊館

「どうだね龍介!」

晩餐のあとの珈琲を啜っていた春田博士は、龍介少年を見ながら、読んでいた新聞紙を投げだして話しかけた。

「近ごろ例の謎の白堊館事件というのが、ばかに新聞で騒がれているが、あれは全体どんな事件だったのだね?」

「ああ、あれですか?」

龍介少年は食後の林檎を噛みながら答えた。

「あれは近頃にない面白い事件なんです、父様。なんでも松川源二という工学博士が、芝区白金三光町の自分の邸で、奇妙な方法で殺されたのですがね、それが妙なことには、殺される一週間ほども前から、召使の下男の吾郎という男に俺は幽霊に殺される! ということをくり返していっていたと云うのです。そして下男の吾郎も、それから時々深夜の邸内を白い背の高い幽霊が、ふわふわと歩いているのを見たといいます。博士は九月八日の深夜書斎で殺されたのです。その時、博士が撃った拳銃の音で眼をさました吾郎が、駈けつけると、扉の閉まっている書斎の中から、背の高い白い幽霊がふわふわと脱け出てきて暗い廊下を応接間の方へきえていったというのです。ぶるぶる顫えながら吾郎が、厳重な、扉の鍵をこじあけて書斎へ入って見ると、博士は深椅子にかけて、片手に拳銃を持って死んでいました。