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ゆうれいやしきのさつじん

幽霊屋敷の殺人

山本 周五郎

「少年少女譚海」1930(昭和5)年9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,339 字 · 19 页

青空文庫

吾郎はじっと龍介を睨んでぐずりぐずりと室を出ていった。

しかし、吾郎は間もなく引返してきて、のろくさした調子でいった。

「そいから……役に立つかなんか知んねえけど、旦那様ぁいつも、その壁にかけてある額の字を見ちゃあ、これさえ分かったらなあって、云っていらっしゃりましたよ」

龍介は教えられた額を見た。それは日本海大海戦の画で、その画の上部に黒く片仮名で「クワウコクノコウハイコノイツセンニアリ」と書いてあり、「コノイツセン」というノの字に、赤で・が打ってあった。

その次には「日は東より出でて西に入り、水は北より南に流る」と書いてあった。

龍介はそれをていねいにノオトに写しとった。

「では、すみませんが、庭を見せて頂きます」

龍介はそういって書斎を出た。

庭には別に注意するようなものはなかった。ただ吾郎の部屋の外へきた時大きな鳥籠があって、中に鶏ほどもある珍しい南洋の大鸚哥がいるのを見つけた。

「おや、珍しい鸚哥をもっているね、誰のだね?」龍介が吾郎をふり返って訊いた。

「ああ、それや私がのです、捨三様が私に下さったのです」吾郎が答えた。

「それは三年ばかり、以前に、私が南洋から持って帰ったもので、今は馴れていますが非常な猛鳥で、怒ると犬や犢ぐらいは啄き殺します」