轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
ゆうれい
幽霊
江戸川 乱歩
「新青年」博文館、1925(大正14)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,972 字 · 24 页
平田氏が一寸口をすべらしたのが緒だった。若し相手が普通の人間だったら、なんなく取繕うことが出来たであろうけれど、青年には駄目だった。彼は世にもすばらしい巧みさを以て、次から次へと話を引出して行った。一つは、昨夜あの恐ろしい出来事のあった今朝であった為もあろうが、平田氏はまるで自由を失った人の様に、話をそらそうとすればする程、段々深みへはまって行くのだった。そして遂には、辻堂の怨霊に関する凡てのことが、余す所もなく語りつくされて了ったのである。
聞き度い丈け聞いてしまうと、今度は、青年は話を引出した時にも劣らぬ、実に巧な話術を以て、他の世間話に移って行った。そして、彼が長座を詫びて部屋を出て行った時には、平田氏は無理に打明け話をさせられたことを不快に感じていなかったばかりか、その青年がどうやらたのもしくさえ思われたのである。
それから十日程は別段のこともなく過去った。平田氏はもうこの土地にも懲りていたけれど、足の傷がまだ痛むのと、それを無理に帰京して淋しい邸へ帰るよりは、この賑かな宿屋住いの方がいくらか居心地がよかろうと思ったのとで、ずっと滞在を続けていた。