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かんとんねぎ

広東葱

国枝 史郎

「講談雑誌」1921(大正10)年9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,425 字 · 15 页

青空文庫

「向うに見える洋館がその本部だよ」新井君が自分に囁くので自分は尚も熱心にその洋館を見ていた。その内に自分は何気なく新井君を振り向いて見ると不思議にも新井君は洋館とは反対の方面を見つめているではないか。で自分も其方を見ると、遥か向うの暗黒の中に、提燈の灯が一つ燃えていた。「ハテナ」自分がそう思った瞬間に、新井君が其方へ走り出はじめた。自分もわけがわからず走って行った。その灯に近かづいて見ると警官が五六人と、背広を着た、四五人の人がそこに居た。その中の二人が可成り大きい檻を支えて居た。「やあ!」と新井君が声をかけると警官も背広服も一様に丁寧に頭を下げながら、「お蔭さまで」と云っていた。新井君が自分にすすめるので自分は檻の中を覗くと檻の中には草色をした二尺ほどの蛇が首を上げ真珠のような丸い眼でキラキラ自分を睨みました。

「広東蛇だよ、あの蛇は」その一行が立ち去るのを見送り乍ら新井君は満足そうに言った。そして足許を指さして、「見給え此の辺一面を、広東葱の畑だよ」「それが何うしたというのだね?」自分は愚かにも尋ねた。

「広東蛇は毒蛇だよ」「そして非常に広東葱の味と匂を好むのさ」