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でしのこころ

弟子の心

宮本 百合子

「新家庭」1923(大正12)年9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,926 字 · 8 页

青空文庫

あの時分――女学校の四五年の頃を追想すると、斯うやって夏の田舎の屋根裏の小部屋で机に向っていても、種々な情景が如実に浮み上り、微笑を禁じ得ない心持になる。

私が一番初め千葉先生を教壇に見たのは、四年の西洋歴史の時からであった。

一体、女子高等師範と云う学校は、現在どう改善したか知らないがあの当時は、実に妙な、非人間的な雰囲気を持ったものであった。本校の生徒と云うと、皆、四方八方から体を押さえつけられ、はっと息をつめ、真正面を向いたきり、声も思う存分には出せないと云う風に見えた。ぎごちなく、醜く、その上、頭も活溌でないと云う酷評が、そう酷評でもない程に、少女時代の私の胸にはうとましく感じられていた。

ところが西洋歴史の時から、私の前に現れた千葉先生は、何処となく、その枯渇した状態とは異ったものを持って居られた。

大層すらりと均整の整った体躯、睫の長い、力ある大きな二つの眼、ゆっくりとつくろわず結ねられている髪や衣服のつけ方などが、先ず外形的に、一種の快さを与えた。

最初の一瞥で、何とも云えず感じの深い而も充分威に満ちた先生の為人を感じた私は、歴史の試験で、年代などを忘れ変な答案を出すと、不思議に心苦しい思いをした。