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うしろたてやまはかしまやりがたけにあらざるか
後立山は鹿島槍ヶ岳に非ざる乎
木暮 理太郎
「山岳」1917(大正6)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,698 字 · 15 页
これが私をして越中の所謂後立山は鹿島槍のことではないかと想わしめた最初の記事であった。餓鬼、赤鬼というのは、鹿島槍の北に連なる五竜、牛首、八方、唐松あたりをいうたものであろう。陸測五万の黒部図幅には、現に大黒鉱山の西北に餓鬼山を記載してあるが、これは目に立つ程の高い山ではない。茲にいう餓鬼は後立に連なる国境山脈の山でなければなるまい。餓鬼の田から餓鬼谷や餓鬼岳の名が導かれたのではあるまいか。赤鬼というのは其餓鬼に対しての名称と察せられるから、あの赤いギザギザした牛首岳や唐松岳などには相応した名であろうと思うが、これらは単に想像に過ぎない。
明治四十三年三月の出版に係る高岡新報の記者井上江花著『黒部山探検』と題する書に「黒部奥山公儀御用帖」の中から抜萃した山廻り役の見分記が載っている。原本は前田家の所蔵らしい。若し之を全部渉猟することを得たならば、多くの有力なる資料が得らるるに相違なかろうと想像するが、前田家では容易に所蔵図書の閲覧を許容しないから、『黒部山探検』に抄出してある見分記の活字の誤りと思われる箇所や、其他不明の箇所を原書に拠りて正したいと思っても、人伝で意に任せず、矢張り不明の箇所が少くない、其文は次の如くである。