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おうまじるしはいしゃく
御馬印拝借
山本 周五郎
「講談雑誌」博文館、1944(昭和19)年2月号
N1 · 挑战 · 新字新假名 · 21,483 字 · 43 页
八
ような、明るい酒宴がそれから一刻ほど続き、やがて見張りを残して、兵たちはそれぞれ眠りについた。
源七郎は兵たちが寐しずまるのを待って、四人の組がしらをつれて武庫へはいってゆき、嵩張った大きな荷包を運び出した、それは掛川から持って来て武庫へ納めたまま手もつけなかった物である、いったいなんだろうという疑問の種になっていたのが、今ようやく眼の前に解きひらかれるのだ、組がしらたちは望楼の下へ運んで来ると、興を唆られたようすで、その包をとり囲んだ、源七郎は姿勢を正して「礼……」と云った、四人はびっくりしながら急いで低頭した、そして荷包が解かれた、幾重にも包んである中からあらわれたのは「金の御幣」と「金の扇」の二つの大馬印だった、四人はあっと息をのんだ、それは二つとも徳川家康の馬印である、家康本陣ならでは見ることのできないものなのだ、かれらはあまりに意外だったので、なかば茫然と源七郎をかえりみた、源七郎はしずかに手をあげて「それを塁壁の上へ立てるのだ……」そう云いながら、自分からさきにその場所へあがっていった。
八
「おいみろ、御本陣の馬印だ」