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ふくしゅう
復讐
豊島 与志雄
「風雪」1950(昭和25)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,806 字 · 20 页
そのくせ、その全体が、しきりに何かを訴えかけてくる。これはもうそっくり、日本流の幽霊の姿だ。然し、やさしいなつかしい幽霊で、夢がさめてからも、瞼を開くのが惜しまれる。
そのような夢を、私は自分で意識するよりもずっと頻繁に、みているのではないかと思われる。実際、私は夢をみること甚だ少い。少いのは、覚えていることが少いのであって、本当は、意識しないうちに忘れ去るのではあるまいか。夢に出て来てもよい筈の人々はずいぶん多いのである。
意識的に努めれば、幾人かを引続き夢みることもある。これは女人のことが多い。或る時、小学校時代に親しかった女友だちを夢みた。謂わば淡い初恋の相手である。小学校を出てから以後、嘗て逢ったこともないが、夢の中では、そのひとがすっかり成人していて、私と同じぐらいの年配になっている。顔立や衣類のことはよく分らぬが、髪の恰好だけは分り、そのひとだということが最も確実である。それが、すぐそこに、黙って坐っている。なにかほのぼのとした幸福な感じだ。夢がさめても、香りに似た後味がなつかしく、瞼を閉じたまま半顔を布団の襟に埋めて消え去った夢のあとを追っていると、いつしかまたうとうと眠ったらしく、こんどは、十年前に亡くなった親しい女人のことを夢みた。