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こころのかわ
心の河
宮本 百合子
「改造」1924(大正13)年6月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,442 字 · 37 页
……ひどく不安なの」
「……我儘だろう?」
保夫は、さよの笑いを釣り出そうとして、誇張した表情までつけ足した。さよは、真剣で否定した。
「そうではなくてよ。決してそうではありません。二人で暮して行く以上、大事なことだから本気で聞いて下さる方がいいわ。
私はね、この頃貴方が判らないの。貴方の心持の中心が、生きて行く蕊が、私とまるで別な、遠い処にあるようで苦しいの。それは勿論」
彼女は、気を入れて聞き始めた保夫に説明した。
「同じような処もあってよ。同じに考えたり思ったりする事もあります。けれども、それは些細なことで、結局お互がどちらでもいいから、無意識に譲り合って行くのでそうなので、大元の処へ行くと、二つがすうっと離れねばならないようなの。お判りになる? 私の云うことが……。例えば、今、私がこんなことを云うまで、貴方一寸もそういう心持は感じていらっしゃらなかったでしょう? 自分が感じないばかりでなく、私が感じていることも、まるでお感じにならなかったでしょう?――それが離れていると私が云うところです」
「ふうむ。……然しそれは、君が僕の気持をよく理解しないからだろう。