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こころのしらべ
心の調べ
宮城 道雄
宮城道雄『心の調べ』。同一底本的分册已合并为一书。收入:心の調べ、雨夜の駅、音の世界に生きる、垣隣り、声と食物、声と性格、声と人柄、五十年をかえりみて、純粋の声、春雨、耳の日記、昔の盲人と外国の盲人、山の声、私のすきな人、私の若い頃、レコード夜話。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 29,958 字 · 66 页
私の居た処は、小学校の直ぐ下で、表は広い草原であった。朝鮮へ来て間もなく秋が訪れて、その草原からはいろいろの虫が聞えはじめた。
また夕方になると、直ぐ上の空の方を雁がたくさん啼きながら通って行く。
私は表へ出て、それをじっと聞いていると、内地のことが想い出されて、師匠は今頃どうして居られるか、師匠に会いたいなと思うのであった。
はじめての朝鮮の冬は、身にしみて寒かった。卵が凍って殻を割っても、お膳の上でころがったり、なっ葉の漬物を噛むと、シャリッと音がして、歯にしみわたったり、蜜柑なども噛むと音がした。火箸のような金のものを持つと、手に吸いつくようになる。
また夜眠っている中に、自分の息が、布団の襟に凍りつく。窓硝子へ部屋の中の水蒸気が凍りついて、さわってみるといろいろの形の小さい粒が、指先に触れる。それに朝の日光が当ると、美しいとみんなが言った。また冬には、かささぎの声が珍らしかった。
三寒四温といって、思いがけなく暖かい日もあった。
春が来るのは遅かったが、春になると鳥の声が長閑かであった。夏の昼間はきびしいが夕風が立つと、夜寒を感じるのであった。