轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

しんじゅう

心中

森 鴎外

「中央公論」1911(明治44)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,515 字 · 17 页

青空文庫

それが遠い、遠い向うにちょんぼり見えていて、却てそれが見える為めに、途中の暗黒が暗黒として感ぜられるようである。心理学者が「闇その物が見える」と云う場合に似た感じである。

「こわいわねえ」と、お花は自分の足の指が、先きに立って歩いているお松の踵に障るように、食っ附いて歩きながら云った。

「笑談お言いでない。」お松も実は余り心丈夫でもなかったが、半分は意地で強そうな返事をした。

二階では稀に一しきり強い風が吹き渡る時、その音が聞えるばかりであったが、下に降りて見ると、その間にも絶えず庭の木立の戦ぐ音や、どこかの開き戸の蝶番の弛んだのが、風にあおられて鳴る音がする。その間に一種特別な、ひゅうひゅうと、微かに長く引くような音がする。どこかの戸の隙間から風が吹き込む音ででもあるだろうか。その断えては続く工合が、譬えば人がゆっくり息をするようである。

「お松さん。ちょいとお待ちよ。」お花はお松の袖を控えて、自分は足を止めた。

「なんだねえ。出し抜けに袖にぶら下がるのだもの。わたしびっくりしたわ。」お松もこうは云ったが、足を止めた。

「あの、ひゅうひゅうと云うのはなんでしょう。