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「しんりしけん」じょ
心理試験
小酒井 不木
小酒井不木『心理試験』。同一底本的分册已合并为一书。收入:「心理試験」序、外務大臣の死、国枝史郎氏の人物と作品、ヂュパンとカリング、二重人格者、ポオとルヴェル、歴史的探偵小説の興味、誤った鑑定、安死術、恐ろしき贈物、怪談綺談、稀有の犯罪、体格検査、被尾行者、変な恋、「マリー・ロオジェ事件」の研究。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 96,338 字 · 197 页
が、こんなことを書いていては、書く私の困惑よりも、読者の御迷惑の方が遙かに大きいと思うから、これから歴史的探偵小説の興味というようなことに就て、思ったままを述べて見たいと思う。
歴史的探偵小説に限らず、上手に書かれた歴史小説は、とにかく、読んで面白いものである。事件の推移の有様よりも、その事件の行われている背景がいうにいえぬ楽しい気分を醸してくれるものである。白日に照された景色よりも月光に照されてぼんやりしている景色の方が、何とのう、神秘的な、怪奇的な奥床しい気分をそそると同じように、過去の時代即ち想像によってしか思い浮べることの出来ぬ時代もそれと同じような気分を湧かすからである。
岡本綺堂氏の「半七捕物帳」は私の大好きな歴史的探偵小説の一つであるが、事件そのものよりも、舞台が江戸であるということにいうにいえぬ嬉しさを覚える。綺堂氏自身もやはり「半七聞書帳」に於て、江戸の俤をうつすに苦心しておられるようである。歴史的でない普通の探偵小説でも、英米の作品には、よく東洋例えば、ペルシャ、インド、支那、或はまたエジプトなどを舞台として書かれているのが少くないのは、つまり、ヴェールを通して物を眺めるような、或は股のぞきをして景色を見るような一種の言い難い美感を読者に与えることが出来るからであろう。