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しんりしけん

心理試験

江戸川 乱歩

「新青年」博文館、1925(大正14)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,728 字 · 46 页

青空文庫

四

では一体誰れを疑ったらいいのだ。

そこには確証というものが一つもなかった。署長等の云う様に、斎藤を疑えば斎藤らしくもある。だが又、蕗屋とても疑って疑えぬことはない。ただ、分っているのは、この一ヶ月半のあらゆる捜索の結果、彼等二人を除いては、一人の嫌疑者も存在しないということだった。万策尽きた笠森判事は愈々奥の手を出す時だと思った。彼は二人の嫌疑者に対して、彼の従来屡々成功した心理試験を施そうと決心した。

四

蕗屋清一郎は、事件の二三日後に第一回目の召喚を受けた際、係りの予審判事が有名な素人心理学者の笠森氏だということを知った。そして、当時已にこの最後の場合を予想して少なからず狼狽した。流石の彼も、日本に仮令一個人の道楽気からとは云え、心理試験などというものが行われていようとは想像していなかった。彼は、種々の書物によって、心理試験の何物であるかを、知り過ぎる程知っていたのだ。

この大打撃に、最早や平気を装って通学を続ける余裕を失った彼は、病気と称して下宿の一室にとじ籠った。そして、ただ、如何にしてこの難関を切抜けるべきかを考えた。丁度、殺人を実行する以前にやったと同じ、或はそれ以上の、綿密と熱心を以て考え続けた。