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しんれいさつじんじけん

心霊殺人事件

坂口 安吾

「別冊小説新潮 第八巻第一四号(創作二十二人集)」1954(昭和29)年10月15日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 25,557 字 · 52 页

青空文庫

ともかく開けてみようてんでミネチャンに庖丁を持ってこさして今や開けようというところへ父が血相変えて出て来たんですってね。待て! それはオレのだ! と云って凄い見幕で怒鳴ったんですッてさ。怒っても凄い見幕を人に見せるような素直な父じゃアないんですよ。もっと陰険な父なんです。ところがその時はもの凄い見幕で怒ってね、庖丁をとりあげて投げすてたそうです。八十松クンはその見幕におどろきながらも、ですがこれは私名宛の荷物なんですからと答えると、誰の名宛でもその荷物は私の荷物だと父はキッパリ断定して人をよんで奥の部屋へ運ばせてしまったのだそうです」

「それは奇妙ですね」

「奇妙でしょう。もっと奇妙なことがあるんです。今朝八時ごろ八十松クンは車をよんでその荷物だけ駅へ持って行って送りだしたんです。眼がさめると食事もせずにいきなりですよ。例の実演場の方はまだそのままなんです。食事を食べ終えてからポツポツ取り片づけにかかってるんですよ。どうしてみんな出来上ってから一しょに運ばないのかと思ってね、なにかワケがありそうだからオジサンに報告に来たのです」

「それはすばらしい報告かも知れないね。