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あやしのやかた

怪しの館 短編

国枝 史郎

国枝史郎『怪しの館 短編』。同一底本的分册已合并为一书。收入:怪しの館、一枚絵の女、犬神娘、開運の鼓、猿ヶ京片耳伝説、日置流系図、北斎と幽霊。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 81,915 字 · 165 页

青空文庫

白飛白を着たおきたの姿が、豊国によって描かれて、それが市中へ売り出されたのは、ほんの最近のことであり、飛ぶように売れて大評判であった。

来る客来る客が噂して褒めた。

「左の手に団扇を提げ、右手に茶盆を捧げた、歌麿の描いた絵もよかったが、今度のはまた一段とねえ」

などと云うものがあるかと思うと、

「襦袢の襟に鹿の子をかけ、着物の襟へ黒繻子をかけ、斜めに揃えた膝の上へ、狆を一匹のっけたところを描いた、栄之の一枚絵もよかったが、今度のはいっそサラリとしていい」

こう云って褒めるものもあった。

――容色極メテ美麗ニシテ愛嬌アフルルバカリナリ。茶代ノ少キ客トイエドモ軽ク取リ扱ワズ、況ンヤ多ク恵ム者ニオイテヲヤ。――

と書かれたおきたであった。どの客にも愛想よく接した。今日はわけても褒められるので、心うれしく立ち振る舞った。

と店先を人々と混って、網代の笠を冠った新発意が、その笠をかたむけおきたを見ながら、足を早めて通って行った。

二

「あ」

とおきたは口の中で叫び、急いで店先きまで小走って行き、その新発意を見送った。

新発意は幾度となく振り返った。