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あやしのやかた

怪しの館 短編

国枝 史郎

国枝史郎『怪しの館 短編』。同一底本的分册已合并为一书。收入:怪しの館、一枚絵の女、犬神娘、開運の鼓、猿ヶ京片耳伝説、日置流系図、北斎と幽霊。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 81,915 字 · 165 页

青空文庫

お顔へ、微笑をさえも含ませて、争いを聞いておられました。これは吉之助様のご性質や、俊斎様のご性質を、知りきっておられたからでございまして(争いの後には和解が来る)ことを、見抜いておられたからでございます。

ご上人様を上等のお駕籠にのせ、私たち三人がご警護して、竹原様のお家を出ました時、東の空は白みはじめ、涼しいよりも少し肌寒い風が、かなり強く吹いておりました。

二

駕籠の前方半町ばかりの先を、俊斎様が警戒して歩き、吉之助様が駕籠側に附き、私がその後からお従いする――といった順序で歩いて行きました。坊主負いにした風呂敷づつみの荷物を、揺り上げ揺り上げ従いて行く私の、眠りの足らない眼にも町の辻や角に、捕吏らしい人影の立っているのが見えて、心がヒヤヒヤいたしましたが、眼にとめて駕籠を見送るばかりで、誰何するものとてはありませんでした。平然と歩いて行ったからでしょう。

こうしてとうとう京の町を出はずれ、竹田街道へさしかかりました。と先を歩いていた俊斎様が、足早に引っ返して参りまして、

「捕吏らしい奴ばらが十二、三人、向こうの茶屋に集っておるがな」