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かいとうおう

怪塔王

海野 十三

「東日本小学生新聞」東京日日新聞社、1938(昭和13)年4月8日~12月4日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 167,635 字 · 337 页

青空文庫

「さあ、竹法螺が出来たぞ。これならよく鳴りそうだ」

と、竹法螺を唇にあて、はるかふもと、村の方をむきながら、ぷうっと大きな息をふきこみました。

ぷーう、ぷーう、ぷーう、ぷーう。

竹法螺は、大きな、そしていい音色でもって、朗々と鳴りだしました。その音は山々に木霊し、うううーっと長く尾をひいてひびきわたりました。

「ああ、いい音だなあ」

一彦少年は、傷のいたみをわすれて、お爺さんのふく竹法螺の音に聞きほれました。

お爺さんは、いくたびもいくたびも竹に口をあて、頬ぺたをゴムまりのようにふくらませ、長い信号音をふきつづけていましたが、

「さあ、このくらいやれば、村の衆の耳に、この竹法螺の音がはいったろう」

「お爺さん、今の竹法螺を聞きつけて、村の人がこの山の中までのぼって来るのかい」

「そうさ。皆おどろいて、ここへのぼって来るよ。ああ言うふき方をすると、ちゃんと場所がわかるのさ」

「竹法螺をいろいろにふきわけて、ふもと村へ言葉を知らせられないの」

「ふきわけて言葉を知らせることができるかって。それは無理だ、息がつづかない」

5

炭やき爺さんは首をふって、竹法螺でもって、ふもと村へ言葉をおくるのには、とても息がつづかないと、ざんねんそうにいいましたので、これを聞いた一彦少年はちょっとがっかりいたしました。