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かいとうおう

怪塔王

海野 十三

「東日本小学生新聞」東京日日新聞社、1938(昭和13)年4月8日~12月4日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 167,635 字 · 337 页

青空文庫

3

怪塔ロケットにつながって、一万メートルの上空を滑走していく青江機上では、小浜・青江の二勇士が顔色一つかえずにのんきな話をつづけています。

「上官、まったく気持がいいですねえ。第一、エンジンをはたらかさなくてもいいからガソリンはいらないし、その上エンジンの音もプロペラの音もしないから、しずかでいい。ただうるさいのは、あの怪塔ロケットが放出するガスの音です」

「うん、ガスの音もかなわんけど、ガスの臭はいやだな。プロペラがまわらなくなったので、あの悪臭が頭の上から遠慮なくおりてくる」

「それでは毒ガスマスクを被りましょうか」

「うん、それほどのこともなかろう。ロケットのお尻の方にまわったのが、こっちの不運だ。いや、今になれると楽になるよ」

「私は、ガスの悪臭をそれほど苦に感じません」

「ほう、それほど感じないとは、貴様にしては感心だな。おれは相当つらいよ」

「いや、それほど私をほめていただかなくともいいのであります」

「貴様、きょうはいやに謙遜するね」

「どうも恐れ入ります。じつは昨日から風邪をひいていますので、鼻がきかないのであります」

「なんだって、風邪をひいていて、鼻がきかないというのか。