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かいとうおう

怪塔王

海野 十三

「東日本小学生新聞」東京日日新聞社、1938(昭和13)年4月8日~12月4日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 167,635 字 · 337 页

青空文庫

それは、どうやら帆村の知っている人物であったと見えます。しかもすこぶる意外の人物であったらしいのです。それは一体、誰だったでありましょうか。

怪人物は、岩窟内に誰もいないことをたしかめると、ついにその岩の割れ目から匐いあがってまいりました。そしてなおもあたりに気をくばりながら、なにかしきりに考えごとをしているらしいのです。

そのときです。帆村は岩かげからとびだしました。そして怪人物の前に、ぱっと躍りでたのです。

「おお、大利根博士!」

「えっ!」

3

「大利根博士!」

と声をかけられて、相手はびっくり仰天しました。思わずたじたじと、体をうしろにひきましたが、あっあぶない! そこにはさきに怪塔王の墜落した岩の割れ目があります。

「だ、誰じゃな」

博士は、しわがれた声で、口ごもりながらいいました。そして手をうしろへまわして、しきりに岩をさぐっています。逃路があれば、逃げるつもりとみえます。

「あははは、博士はご存じないかもしれませんが、僕は帆村荘六という探偵です。博士のお行方を心配して、ここまでやってきたものです。お見うけしたところ、僕たちの心配していたのとはちがって一まずご無事らしいのは、なによりうれしいことです」