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かいむ
怪夢
夢野 久作
「文学時代」1931(昭和6)年10月、「探偵クラブ」1932(昭和7)年6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,100 字 · 23 页
……続いて起る砂ほこり……ガソリンの臭い……4444の番号と、赤いランプが見る見るうちに小さく小さく……。
……ハテナ……あの自動車の主は人形じゃなかったかしら……あんまり綺麗過ぎる横顔であった。着物はよくわからなかったが、水の滴るような束髪に結って、真白に白粉をつけて、緑色の光りの下にチンと澄まして……黒水晶のような眼をパッチリと開いて、こころ持ち微笑みを含みながら、運転手と一緒に、一直線の真正面を見詰めて行った。あの反り身になった澄まし加減がイカニモ人形らしかった……と思う中に又一台あとから自動車が来た。
私はすぐに振り返ってみた。
その自動車の主はパナマ帽を冠った紳士であった。赭ら顔の堂々と肥った、富豪の典型のような……それが両手をチャンと膝に置いて、心持ち反り身になったまま、運転手と一緒に、一直線の真正面をニコニコと凝視しながら、私の前をスーッと通り過ぎた。自動車の番号は11111……。
……人形だ人形だ。今の紳士はたしかに人形だった……ハテナ……オカシイゾ……。
……と考えているうちに私は又、石のように固くなったまま向うから来かかった自動車の内部を凝視した。