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かいむ
怪夢
夢野 久作
「文学時代」1931(昭和6)年10月、「探偵クラブ」1932(昭和7)年6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,100 字 · 23 页
私は信号綱を引いて海面の仲間に知らせた。
私は潜水兜に取付けた電燈の光りをたよりに、ゆっくりゆっくりと歩き出した。まん丸い、ゆるやかな斜面を持った灰色の砂丘を、いくつもいくつも越えて行った。
しかし行けども行けども同じような低い、丸い砂の丘ばかりで、見渡しても見渡しても船の影はおろか、貝殻一つ見当らなかった。……のみならず私は暫く歩いて行くうちに、そこいら中がいつともなく薄明るくなって、青白い、燐のような光りに満ち満ちて来たことに気が付いた。……沙漠の夕暮のような……冥府へ行く途中のような……たよりない……気味のわるい……。
私は静かに方向を転換しかけた。何となく不吉な出来事が、私の行く手に待っているような予感がしたので……。けれども、まだ半廻転もしないうちに、私はハッと全身を強直さした。
ツイ私の背後の鼻の先に、いつの間に立ち現われたものか、何ともいえない奇妙な恰好をした海藻の森が、涯てしもない砂丘の起伏を背景にして迫り近付いている。
……海藻の森……その一本一本は、それぞれ五六尺から一丈ぐらいある。頭のまん丸いホンダワラのような楕円形をした……その根元の縊れたところから細い紐で海底に繋がっている。