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かいむ

怪夢

夢野 久作

「文学時代」1931(昭和6)年10月、「探偵クラブ」1932(昭和7)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,100 字 · 23 页

青空文庫

多分歯噛みをして口惜しがっているのであろう。溺れかけた人間のように両手を振りまわして、死物狂いに硝子の舗道を蹴立てて来る身振りがトテモ可笑しい……ザマを見やがれ……と思いながらも、ウッカリすると追い付かれるぞと思って、いい加減な処でクルリと方向を転換したが……私はハッとした。いつの間にか地平線の端まで来てしまった。……足の下は無限の空虚である。

私は慌てた。一生懸命で踏み止まろうとした。その拍子に足を踏み辷らして硝子の舗道の上に身体をタタキ付けたので、そのまま血だらけの両手を突張って、自分の身体を支え止めようとしたが、しかし今まで辷って来た惰力が承知しなかった。私の身体はそのまま一直線に地平線の端から、辷り出して無限の空間に真逆様に落込んだ。

私は歯噛みをした。虚空を掴んだ。手足を縦横ムジンに振りまわした。しかし私は何物も掴むことが出来なかった。

その時に一直線に切れた地平線の端から、探偵の顔がニュッと覗いた。落ちて行く私の顔を見下しながら、白い歯を一パイに剥き出した。

「わかったか……貴様を硝子の世界から逐い出すのが、俺の目的だったのだぞ」

「……………」