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あしのうら

怪奇探偵小説名作選7 蘭郁二郎集 魔像

蘭 郁二郎

蘭郁二郎『怪奇探偵小説名作選7 蘭郁二郎集 魔像』。同一底本的分册已合并为一书。收入:足の裏、穴、息を止める男、腐った蜉蝣、幻聴、孤独、舌打する、植物人間、蝕眠譜、自殺、鉄路、脳波操縦士、古傷、鱗粉。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 109,233 字 · 223 页

青空文庫

(どうにでもなれ――)

彼は、口の中で自分を罵ると、グッと外套のポケットに手を突っ込み、又、ひょこりひょこりとあるき出した。

蕭条と荒れ果てた灰色の野の中を、真黒い外套と共に、あてもなく彷徨よっている中田の顔は、世にもすさみ切った廃人のそれであった。

×

それから又、どの位時間のたったものか、やはりハッキリしたことはいえないのだが、その荒涼たる道の向うから、も一人中田のように何か口の中で呟きながら、蒼白い若い男があるいて来た。

その男はこの寒空に、着流しの着物をしどけなく開いて、猫じゃらしの帯が、いまにもずり落ちそうに見えた。着物は――中田の朦朧とした眼には、黒っぽい盲縞のように思えたが、それが又、あたりの荒廃色と、妙に和合するのであった。

中田は行きずりに、フト

『駅へは、どっちに行くんでしょう……』

と、呟くように訊くと、その若い男は、ギクンと立ち止まって、中田の顔を覗き込むと言葉短に

『こっちです』

そういって、くるッと後を振り向き、今彼がやって来た方へ、コソコソと帰り始めるのだった。

中田は、霞んだ頭の中で、

(案外、親切だな――)

と小さく呟くと、遅れないように、その男と肩を並べてあるき出した。