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あしのうら

怪奇探偵小説名作選7 蘭郁二郎集 魔像

蘭 郁二郎

蘭郁二郎『怪奇探偵小説名作選7 蘭郁二郎集 魔像』。同一底本的分册已合并为一书。收入:足の裏、穴、息を止める男、腐った蜉蝣、幻聴、孤独、舌打する、植物人間、蝕眠譜、自殺、鉄路、脳波操縦士、古傷、鱗粉。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 109,233 字 · 223 页

青空文庫

三

暗い夜霧の下をくぐって、私がアパートに帰りついた時だった、アパートの入口の事務所のおじさんが、

『一寸、お留守にこの方が見えましたよ、……顔色の悪い人ですねェ――』

と差し出された名刺には、「黒住箒吉」と鮮やかに印刷されていた。私の目には、その文字がピョコンと飛出してみえた。

周章て裏がえしてみると、名刺の裏には鉛筆のはしり書きで――御無沙汰失礼。お留守で残念だった、重大な要件で、是非一度会いたい、明日午後六時銀座ナイルで――

と、簡単に書いてあった。

(行き違いだったのか)

(それにしても、重大な要件とは――)

でも、あしたの六時にはすべて解決するだろうと思った。

四

先刻、 ! ! ! ! ! !

と、喫茶店ナイルの時計が、私の肩の上で鳴ったが、黒住は、まだ現れなかった。

総硝子張りの、温室のような近代構成派の喫茶店ナイルは光々と白昼電燈に照らし出されていたが、硝子戸一枚の外はあの銀座特有のねっとりとした羊羹色の闇が、血管のようにくねくねと闇にはしるネオンサインを小さく瞬たかせながら垂れ罩めていた。

もう冷えきったコーヒーのカップを口に運ぼうとした時だった。