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こいのいっぱいうり
恋の一杯売
吉行 エイスケ
「文芸公論」昭和2年10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,183 字 · 15 页
不幸なことに北海から税関をかすめて密輸入される鮭類と黒狐の肉は腹を満たすためには四十法が必要なので、アンナ・ニコロはスラビナに食欲さえ感じて黙ってしまうのだが、それにも拘らず私は現代のロシアの気狂い染みた歴史家の記録が純粋な女性の愛情まで資本家に身売りしていることが分るのであった。
窓の外にはネオ・アクメイズの姿がプロレタリアの肉体を蝸牛のように這っている。アンナ・ニコロ接吻したまま、
――ヨシユキ、ロマンチシズムとヒロイックなスラビナの時代はまだロシア人は香のいい肥料があったのです。妾達の祖先が献身的であったころ、アルチバセフの快楽主義にさえ身顫いしたロシア婦人は欧羅巴スタイルの淫事も、寝床で踊る未来派の怪奇も、断髪にする苦痛さえもなし、公爵婦人の名誉さえ瞬間に地に葬ったのです。
――ニコロ、敬虔、僕の思いも過ぎ去った恋物語りです。
ああ、妾が貴男を思っている。無産階級の靴音にも増して力づよく慕しい。
――僕の心意気、見してやる。白薔薇のような花嫁に。
私達戸外に這い出す。青い絨氈の上を鏡のない人間が歪んだシルクハット、胸は悲しい葬だ。心行くまで私はお前を熱愛したのだ。