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こいのいっぱいうり

恋の一杯売

吉行 エイスケ

「文芸公論」昭和2年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,183 字 · 15 页

青空文庫

太く短い環、古代の貞節な女に似て垂れ下った醜い肩、まるで病み疲れてサタンに生育を阻止された女が奇妙な嬌態をして、流行の衣裳と近代の手管をもって私の前に現れたのだ。

コメット・ヌマタは夜の空間、花火吹散らして空高く、飛行ズボン脱いで牡鶏の真似をしている。ひどく古加乙涅の酔が利いた夜であった。

今では男が女のようにスカートをはく時代なのだ。銀座の市場では阿片の花が陽気に満開し、薬種屋の前では群集が巡邏に口輪を嵌めている。地球の地下室では切開された、メロ・ドラマの開演のベルがけたたましく鳴りひびくのだった。

こうした瞬間を限って変る人間の気持ちと、構成され破壊される歴史の記録を掲示する銀座の青色の夜、プロレタリア駆逐したプチ・ブルジョワ達によって、かくも盛大に開演された未来派のオペラ、金属的なめろでい、青磁色の空には女優募集の広告と、ダダイズムの集会の予告板とが蛾と戯れていた。カバレットのキャラバン、酒場から酒場へ近道の建札、夜の美粧院に吊された青蛙の料理写真にしたらんたん、足の化粧法、日本人を日本人らしく見せない整型学、醜いものをグロテスクにするための進歩主義、あわただしい木馬競走に見惚れる観衆の喝采。