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きょうふのくちぶえ

恐怖の口笛

海野 十三

「富士」1934(昭和9)年8月号~11月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 60,713 字 · 122 页

青空文庫

と黒布の人物は皺枯れ声でいった。皺枯れ声だったけれども、確かに女性の声に紛れもなかった。

「……」青竜王は無言で、石のように動かない。

「そうやって椅子に縛りつけられりゃ、生かそうと殺そうと、私の自由だよ。この短刀で、心臓をグサリと突くことも出来るし、お好みなら、指一本一本切ってもいい。苦しむのが恐ろしいのなら、ここにある注射針で一本プスリとモルヒネを打ってあげてもいいよ」と憎々しげに云った。

「約束を違えるなんて、卑怯だネ、君は」と青竜王は始めて口を開いた。

「お前は莫迦だよ。――妾の正体を知っている奴は、皆殺してしまうのだ。お前を今まで助けてやったのを有難いと思え。しかし今日という今日は、気の毒ながら生きては外へ出さないよ」

と、まるで芝居がかりの妖婆のような口調でいった。そして短刀を擬してジリジリと青竜王の方へ近づいてくるのであった。

「まあ待ち給え。何時でも殺されよう。だがその前に約束だけは果させてくれ。というのは、僕は君に云いたいことがあるんだ」

「云いたいことがある。有るなら最期の贈り物に聞いてやろう。但し五分間限りだよ。早く云いな――」

「僕はこれまで、かなり君を庇ってきてやったぞ。